箱根路を駆けた名選手たち~田村優宝~

OB紹介

こんにちは。月に1度のシリーズ「箱根路を駆けた名選手たち」です。今回紹介する選手は田村 優宝(日大卒)です。

 

日大はここ2年間、箱根駅伝出場を逃すなど、伝統校として苦戦が続いています。エリート選手が複数いる一方で、選手層が薄く、どこか粘りが弱いような戦いぶりが嫌でも目についてしまいます。

 

それでも、先日の全日本予選では見事にギリギリ7位での本戦出場を決めるなど、しぶとく粘り強い戦いができるようになりつつあることを感じます。

 

この戦いを見て思い出したのが、日大が前回シード権を獲った9年前のチーム。このとき主将としてチームを牽引していたのが田村です。

 

彼もエリート選手でしたが、順風満帆とはいかない競技生活でした。

それでも、最後には主将として日大をシード獲得に導いた。そんな田村のクールで熱い箱根駅伝を振り返ります。

 

○高校時代

青森山田高校出身の田村。中学時代から世代トップクラスとして活躍しており、高校では1学年上の村澤明伸を破って国体優勝を果たすなど、めちゃくちゃ強い選手として有名でした。全国高校駅伝でもエース区間の1区で4位。トラックロードともに結果を残すトッププロスペクトでした。

 

〇大学時代

■1年次

超有望株の田村が進学先に選んだのは日大。前年に出雲、全日本ともに優勝を果たすなど、強豪チームではありましたが、ダニエル、ベンジャミンといった留学生のパワーも大きく、田村の入学時には選手層にやや陰りが見えていました。

 

そんな中、スーパールーキーの田村は1年目から大活躍。箱根予選で個人13位、全日本でも1区4位といきなり非凡な成績を残すと、箱根ではなんと山上りの5区を任されます。

しかし、このときチームは3区森谷の失速から流れを喪失。田村自身も区間19位と飲み込まれてしまい、日大は総合20位に沈んでしまいました。

 

 

■2年次

前年のリベンジに燃える2年次、田村は箱根予選で個人7位と前年以上のパフォーマンスを見せます。

しかし、日大は佐藤が個人2位、ベンジャミンが個人4位と田村含めて3人も10位以内に入りながら、後続が全くと言っていいほど続かず、まさかの予選落ちとなってしまいます。

 

伝統校の予選落ちはかなりのショックでした。

それでも、唯一出場権があった全日本では田村が1区区間賞を獲得。

勢いに乗ったチームはそのまま4位でシードを獲得しました。

その後、田村は学連選抜に選出されて箱根駅伝に出場。レベルの高い1区を9位で走破するなど、チーム、個人ともに反撃の一歩目を踏み出します。

 

 

■3年次

日大復活を目指した3年次、田村は故障に悩まされることに。

箱根予選でも個人89位と成績を落とします。それでも、チームメイトたちが育ちつつあったのも事実。

箱根予選は田村が稼げなかった分も各選手がカバーして2年ぶりの本戦復帰。

全日本でも田村は1区9位にとどまりながら、チームは6位で再びのシードを獲得しています。

 

それでも、箱根では総合15位。2区ベンジャミンで首位に立ちましたが、3区佐藤の失速から流れを変えられる選手がいませんでした。

田村も9区11位にとどまり、不本意な箱根路となりました。

 

■4年次

全日本と箱根予選では結果が出るものの、箱根のシードにどうしても手が届かない日大。

田村は主将に就任しますが、故障との戦いが長引きます。

 

結論から言うと、田村の4年次の主要大会の成績は箱根予選179位のみ。

 

高校時代からトップエリートとして活躍してきた選手の最終学年の成績としては、いささか寂しい結果でした。

 

それでも、田村が必死に導いてきたチームは最後に結果を残します。

箱根では同期の森谷が2区で奮闘してくれたこともあって、しぶとく10位以内をキープ。最後は総合7位で5年ぶりのシードを獲得しました。

 

田村が入学したときには、エースが稼ぐものの、それ以外の選手たちの結果がついてこないチームでしたが、最後にはエースがいなくとも全員が粘り強く走れるチームへと変わっていきました。

 

そんなチームを作り上げたのがエースで主将の田村だったというのも、趣のある話なのです。

 

〇社会人時代

日大卒業後は強豪チームの日清食品グループに入部します。しかし、故障も長引いたのか、レベルの高いチームの中でなかなか目立った結果を残すことができず、3年で退部しています。

ただ、その後は地元青森の野辺地で職員として働きながら、野辺地高校の陸上部コーチを引き受けているそうです。

 

かつての田村のような、スマートなのに熱い走りができる選手をこれからも育てていってほしいです。

 

〇最後に

田村の4年間は順風満帆ではありませんでした。集大成となる4年目にはほぼ試合に出場することもできず。

それでも、田村が必死に導いてきたチームは確実に成長していきました。

 

田村が走っても勝てないチームが、田村が走れなくても勝てるチームへ。

 

今の日大はドゥング、樋口、松岡の三本柱が頭ひとつもふたつも抜けているチームです。それでも、彼らだけの力では勝てませんでした。

 

でも、兆しは見えています。

当時のように、エースに頼らずとも勝てるチームへと育つ過程を楽しんでいきたいです。

 

 

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