こんにちは。月に1度のシリーズ「箱根路を駆けた名選手たち」です。今回、紹介する選手は聞谷賢人（順天堂大卒）です。
箱根駅伝の花形区間と言えば、みなさん何区を想像されるでしょうか？
花の2区？山上りの5区？それともスタートの1区？
やっぱり注目される区間は往路に集中しているように思われます。
でも、復路でコツコツ走り続けてくれる選手がいるチームこそ強いのです。
前半区間を走るエースたちほど目立つことはなくても、復路のエースとしてチームの土台を支えてくれた選手のストーリーを知ることで、箱根駅伝はより楽しめます。
今回は、そんな復路のエース代表として奮闘していた聞谷の箱根駅伝を振り返ります。
〇高校時代
愛知高校出身の聞谷。チームメイトには後に神奈川大の主力として活躍する東や鈴木祐、山藤などいましたが、駅伝激戦区の中で全国高校駅伝出場を果たすことはできず。聞谷自身も決して全国区で有名な選手というわけではありませんでした。
〇大学時代
■1年次
高校卒業後は順天堂大に進学した聞谷。当時2年連続で箱根シードを獲得しているチームでしたが、その時のメンバーの大半が卒業してしまい、新戦力の台頭が急務となる状況でした。
その中で聞谷は1年目から全日本6区、箱根10区と後半区間メインにレギュラーを掴みます。特に箱根では、1年生には難易度が高いと言われている10区を区間8位と見事に攻略。シード獲得こそならなかったものの、長距離区間への適性を感じさせました。
■2年次
2年次は箱根予選で個人69位と好走すると、駅伝シーズンは全日本6区、箱根10区と前年と同様の区間に出走。それぞれ区間タイムを前年より短縮させていますが、チームがそれぞれシード権に手が届かなかったこともあって、注目度は控えめとなっていました。
■3年次
栃木、塩尻と後輩たちがエース化していく中、復路の中心核としてのポジションに上がりつつある一年となりました。全日本は6区から4区へと、箱根は10区から9区へとより重要度の高い区間へとコンバートされました。
区間順位はそれぞれ区間13位、12位でしたが、後半区間を崩れずにまとめてくれる選手、として計算できるようになっていきました。
特に箱根ではシード争いでしっかり流れをキープし、3年ぶりのシード権獲得に貢献しています。
■4年次
塩尻、栃木の2枚看板に加えて、しっかり復路を走れる上級生が揃っていることで評価も高まってきていた順天堂大。復路の中心は間違いなく主将を務めている聞谷でした。
全日本こそ振るわず予選落ちとなってしまいましたが、箱根では再び9区を任されることになったのです。
10区の作田と共に最後を締めてくれる選手に安心感があったことも効いていたのでしょう。9区の聞谷が襷を受けたときは5位と4年間で最も好位置につけていました。
そして、今回は区間3位と最もいい走りで最後の箱根を駆け抜けました。
順天堂大は総合4位。危なげない継走でシード獲得を果たしました。
〇社会人時代
卒業後はトヨタ紡織に入社。大学1年次から見せていた長距離への適性がマラソンで開花します。これまで6度走ったマラソンで2時間7分台の好タイムで走破した回数はなんと4度。MGCの出場権も獲得しています。
今まで主役になることが少なかった聞谷ですが、日本屈指のマラソンランナーとしてかつてないほどの輝きを放っています。
〇最後に
聞谷は大学時代、決して強烈に目立つ選手ではありませんでした。3年次までは後半区間でずっと区間10位前後。エース区間で躍動していた塩尻や栃木の方が注目されていたのは事実でしょう。
それでも、復路で絶対に外さない走りをする選手がいることがチームの土台を作ってきたことも1つの事実です。
聞谷が在籍していた4年間で16位→12位→6位→4位と箱根駅伝の順位が右肩上がりに推移しているのがその証拠となります。
そして、そのチームの土台を支えてきた聞谷が4年生になって過去最高の走りを見せて、卒業後にマラソンランナーとして一気に開花していることも大変興味深い話です。
今年の箱根駅伝でも田澤や近藤、吉居大和といったエースたちの対決が大いに盛り上がりましたが、将来開花する選手はもしかしたら他にいるかもしれない。
そんな目で見ていくと、箱根駅伝はもっともっと面白くなっていくのです。
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