そんなに細かすぎない箱根駅伝ガイド~往路編~

箱根駅伝

こんにちは。今回は「そんなに細かすぎない箱根駅伝ガイド~往路編~」です。

箱根駅伝は20km以上の区間が10区間もあります。そしてその区間が1区から10区まで、実にバラエティに富んでいて面白いのです。

区間を知ればより箱根が楽しくなる。

コースの特徴や見どころなど紹介していきますので、観戦のお供にご利用ください!

 

それでは今日は往路5区間を一挙ご紹介します。1区からどうぞ!

 

 

~1区~

コース:大手町読売新聞社前→鶴見中継所

距離:21.3km

 

217.1km、10時間をゆうに超える長い戦いの幕開けとなる区間です。スタート時の号砲が鳴る瞬間には一年に一度の緊張感があります。

 

比較的短い距離で起伏も少なく、気温も低いため全10区間で最も走りやすいコースであると言えるでしょう。しかし、1区には各チームが誇る強力な選手が登場します。なぜなら、1区の出遅れは致命傷となり得るからです。1区での1分の遅れは他区間での2分の遅れと同じと言われることもあります。

そして、駅伝とは流れのスポーツです。1区で出遅れるとほとんどの場合、2区以降の選手も本来の力を発揮できずに低空飛行の駅伝となってしまいます。

 

ちなみに前回の箱根駅伝でシード権を獲得した10校のうち、8校は1区で区間10位以内に入っています。残る2校は東洋大(西山:区間14位)と東京国際大(丹所:区間13位)ですが、いずれも2区で大エース(相澤、伊藤)がごぼう抜きでリカバリーしています。

逆に言うと、2区で取り返せる選手がいない限り、1区の出遅れは禁物といっても過言ではありません。

 

ここまで説明してきた1区の重要性を踏まえて、この区間に起用されることが多いのは以下のような選手です。

 

①スピード系セカンドエース

例:小袖(明治大)、小野寺(帝京大)

 

②エース

例:吉田(青山学院大)、中谷(早稲田大)

 

③期待のルーキー

例:三浦(順天堂大)、鈴木(駒澤大)、喜早(東海大)

 

早稲田大の大迫傑が一人抜け出した2011年大会以降、1区は超高速レースになることが増えましたが、近年はスローペースとなることもあり、どんな選手を起用するのか見極めが難しくなっています。

 

1区を楽しむポイントはとにかく自分の応援しているチームの選手が出遅れないように祈ることです。15kmまでに先頭集団から離れてしまうとやっぱり結構な大差がついてしまいます。ハイペースになったときはどんどん選手が脱落していくので本当に心臓に悪いです。スローペースになったときは六郷橋という起伏の大きな橋のあたりでスパートをかける選手が現れるので注目してみてください。

 

~2区~

コース:鶴見中継所→戸塚中継所

距離:23.1km

 

起用されることの多い選手:エース

 

華の2区です。よっぽどの事がなければチームで最も強い選手が登場します。タフなコースで学生最高峰の戦いが見られる楽しい区間です。

 

コースの特徴としてはまず距離が長いこと、そして終盤に戸塚の壁と呼ばれる上りが待ち受けていることです。序盤から突っ込まないと流れに乗れないのですが、それで最後に一番の難所が待ち構えているという理不尽なコースです。

スタミナが尽きてふらふらになりながら中継所にたどり着く選手もいます。

 

2区の見どころは主に2点あります。

1つ目は「ごぼう抜き」です。1区の後でまだ差がない状態でスタートすること、2区の距離が長いことから頻繁にごぼう抜きが見られます。ちなみに過去最高のごぼう抜き記録はダニエル(日大)の20人抜きです。22位から2位まで順位を上げる訳のわからない走りを見せました。さらに訳がわからないのはそのときのダニエルは区間賞を獲れなかったということです。

ダニエルが唯一抜けなかったモグス(山梨学院大)はその時、区間記録を樹立する走りを見せ、我々駅伝ファンにとっては「神」のような存在になりました。

 

2つ目の見どころは「留学生VS日本人学生のエース」です。今回2区への出走が予想される留学生はワールドクラスのイェゴン・ヴィンセント(東京国際大)、ライモイ・ヴィンセント(国士舘大)、箱根予選1位のラジニ(拓殖大)、スピードでは彼らに匹敵するムルワ(創価大)、叩き上げのオニエゴ(山梨学院大)です。

一方、日本人学生のエースとして名取、塩澤(東海大)や田澤(駒澤大)、藤木(國學院大)らが彼らに挑みます。

ちなみに昨年は留学生4人を差し置いて相澤(東洋大)が区間賞を獲得。

「神」と呼ばれたモグスの区間記録も更新し、まさに「箱根から世界へ」を体現しています。

 

~3区~

コース:戸塚中継所→平塚中継所

距離:21.4km

 

遊行寺の坂を下る以外は比較的平坦で走りやすいコースです。

以前は2区までの勢いを持続させる、もしくは流れを作り直す区間として主要区間に位置付けられていましたが、前々回大会からの4区距離延長により往路の中では比較的重要度が控えめな区間となりました。

 

しかし、この区間の行方が優勝争いに大きな影響を与えているのも事実です。

前回は青山学院大、東海大、國學院大など優勝候補のチームがほぼ同時にスタートした3区。青山学院大の鈴木が勢いよく飛び出したことで他校に対してアドバンテージを獲得しました。

 

3区に起用されることの多いのは以下のような選手です。

①スピード系セカンドエース

例:手嶋(明治大)、井川(早稲田大)

 

②チームNo.1ルーキー

例:吉居(中央大)、石原(東海大)

 

1区と起用される選手のタイプが似ており、3区で走った選手が翌年1区にコンバートされるケースが頻発しています。(昨年で言うと中村大聖(駒澤大)や栗原(中央学院大)など)

 

3区の見どころは主に2点あります。

1点目は「スピードスターの競演」です。3区は箱根駅伝の平地区間の中では最も走りやすくスピード感のある区間です。スピードのある選手が輝く舞台なので気持ちのいいごぼう抜きが見られます。

前回はヴィンセント(東京国際大)と田澤(駒澤大)が7人抜き、手嶋(明治大)が5人抜きの快走を見せています。

 

2点目は「景観」です。3区は湘南海岸を左手に望みながら直進する距離が長いことで有名な区間です。海岸と防砂林と選手が並ぶ光景は壮観です。

 

~4区~

コース:平塚中継所→小田原中継所

距離:20.9km

 

起用されることの多い選手:タフ系セカンドエース

 

細かいアップダウンが続き、終盤には上り勾配が待ち受けているため、平地区間の中では最も距離は短いながらタイムが出づらく、難易度の高いコースとなっています。

 

以前は全長18.5kmと最短区間だったことからチーム内10番手の選手やルーキーが起用されることの多いつなぎ区間としての位置づけでしたが、3年前より距離が2.4km延長されたため、一転して主要区間となりました。

 

平地区間の中では2区と並ぶタフなコースのため、チームの中でも特に実力のある選手を置きたい区間です。

 

4区の見どころは何といっても「渋い選手たちの力強い走り」です。4区を走る選手たちは1~3区を走る選手と比べると華が少々不足する部分があるかもしれません。しかし、彼らは頼もしさ溢れる走りを魅せてくれます。難コースに立ち向かう選手の雄姿を見届けてください!

 

ちなみに4区の区間賞は前々回が相澤晃(東洋大)、前回が吉田祐也(青山学院大)です。

相澤は先日の日本選手権10000mで日本記録を更新して優勝、吉田も福岡国際マラソンで優勝するなど、この区間から世界に羽ばたくエースが誕生しています。

そういった意味でもこの区間を次に制する選手は誰になるのか、要注目です。

 

 

~5区~

コース:小田原中継所→箱根 芦ノ湖

距離:20.8km

 

往路の最終区間にして標高差864mを駆け上がる箱根駅伝を象徴する区間です。選手の適性に負うところが大きいため他区間よりタイム差が付きやすいことに加え、以前は23.4kmと最長区間でもあったことから5区で区間賞を獲得した選手がいるチームがほぼ往路優勝を果たすという偏った状況になり、距離が短縮された経緯があります。それでもなお、2区に次いで大きな順位変動が起こりやすい重要区間であることは間違いありません。

 

一生懸命終盤まで上りに上った後、最後に下りが待ち受けていることからここで力尽きて大失速する選手や、場合によっては途中棄権となってしまう選手も現れます。そんな緊張感あふれる5区を走ることが多い選手は以下のとおりです。

 

①.山の経験者

→経験値と適性がモノを言う区間なので基本的には前年5区を走った選手が続投するパターンが多いです。好走を重ねるといつしか「山のスペシャリスト」と言われるようになります。

 

②前年8区を走った選手

→8区は終盤に遊行寺の坂という険しい上り坂が待ち受けていることから、5区の養成区間としての一面を持っています。8区を走った選手が1年間かけて力をつけて5区に挑むということはよくあることです。前回はその前に8区を走った選手のうち、飯田(青山学院大)や山瀬(東京国際大)が5区に挑戦し、好走を見せました。

 

③エース

→ここにエースを置いて走力で箱根の山をねじ伏せにいくチームもあります。國學院大の前エース浦野は3年次に5区に挑戦。特別山上りの練習をすることもなく臨んだのですが、圧倒的な走力でカバーして区間賞を獲得しました。

 

5区の見どころは「山の神のスリル」です。数年に一度、ものすごく箱根5区に適性を持った選手が現れます。山を上り始めたらすぐに彼らが神であることがわかります。彼らは本当に軽やかに山を駆け抜けます。そういう選手がいるチームはほぼ間違いなく往路優勝を果たします。そしてスターになります。5区を走る選手にはそれだけの夢と可能性があります。ぜひ、彼らの挑戦を見届けていただきたいです。

 

そして今回、区間賞候補筆頭は前回覇者の宮下(東洋大)ですが、前回区間上位だった西田(東海大)や飯田(青山学院大)も有力な対抗馬です。

“山を制する者は箱根を制す”

5区の緊張感あふれる戦いに注目です。

 

今回はここまでにします。

次回は復路を紹介します。お楽しみに!

 

 

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