箱根路を駆けた名選手たち~堺晃一~

OB紹介

こんにちは。今年もやっていきます!月に1度のシリーズ「箱根路を駆けた名選手たち」です。今回、紹介する選手は堺晃一(駒澤大卒)です。

 

今回の箱根駅伝で実に13年ぶりの総合優勝を果たした駒澤大。その13年前の優勝の立役者となったのがこの堺選手なのです。

長距離選手らしからぬ筋骨隆々とした上半身と逞しすぎる太ももで人気を博した堺ですが、走りの面でも後方から追い上げる展開に強く、頼りになる選手でした。

 

そんな骨太な堺の箱根駅伝を逞しく振り返ります。

 

〇高校時代

堺の出身高校は兵庫県の飾磨工業高校。堺はエースとして活躍しましたが、兵庫県は西脇工業高校、報徳学園高校、須磨学園高校など強豪校ひしめく激戦区だったため、必ずしも全国に名の知れた選手というわけではありませんでした。

 

〇大学時代

■1年次

飾磨工業高校から駒澤大に進学した堺。当時の駒澤大は箱根駅伝3連覇を果たしている超強豪校でした。同期も安西、平野、藤井、豊後と実力派の選手が揃っており、堺は箱根駅伝4連覇を果たしたチームの中でレギュラーを掴むことはできませんでした。

ただ、この期間にじっくりと取り組んだ身体づくりが、後の活躍の土台となっています。

 

■2年次

2年生になってレギュラーを掴んだ堺。全日本では期待を持って主要区間の1区を任されます。しかし、このときは区間12位と苦戦し、優勝を逃す一因となってしまいました。

 

それでも堺への期待は揺るがず、箱根でも8区に起用されます。

堺に襷が渡ったのは先頭と3分半以上の差がついた4位。ただ、ここで淡々と追いかけられる堺の強みが炸裂します。

先頭の順天堂大の選手が脱水症状に陥ったこともあって、なんと首位を奪取してしまいます。

終盤の難所として知られる遊行寺の坂を力強く駆け上がる堺を評した実況は今もなお語り継がれています。

 

「太ももが走ってきています!!」

 

以来、堺は「太ももくん」と呼ばれるようになりました。

 

しかし、チームは堺の快走もむなしく9区10区で失速し、4年ぶりに優勝を逃してしまいました。

 

■3年次

宇賀地、高林、深津とスピード豊かなルーキー達が加入してきた中、長距離区間を安心して任されたのがこの年でした。

全日本ではアンカーの8区を任されると、首位で受けた襷を悠々と運んでゴール。2年ぶりの全日本優勝を決めました。

 

しかし、箱根は若い駒澤大にとっては難易度が高かったです。

2区を予定していた安西が故障で欠場したこともあって、2区を1年生の宇賀地に託さざるを得ない状況に。

不安視された序盤で案の定苦戦し、優勝争いに絡むことができないどころか、9区の堺に襷が渡った時は9位とシード争いに巻き込まれていました。

 

でも堺なら大丈夫という安心感がありました。

長い9区を淡々と攻略して区間4位の好結果。順位を7位まで上げ、過渡期のチームに貴重なシード権をもたらしました。

この我慢のレースでシード権を維持したことが、翌年の歓喜に繋がります。

 

ちなみにこの時の実況も印象的です。

 

「権太坂もさぞや驚いたことでしょう。太ももがやってきました!」

 

■4年次

集大成を迎えた4年次。前年の苦闘を乗り越えた駒澤大は堺の太ももと同様、強く逞しく成長していました。

全日本では2年連続でアンカーを任されると、チームが7区までに築いてくれた2分以上のリードをしっかり守って、2連覇のゴールテープを切りました。

 

そして箱根でも、その強さを表現することができました。

前年ともに区間2桁に沈んだ1区池田、2区宇賀地が揃って好走を見せて上位でスタートすると、5区を任された安西主将も往路優勝を果たした早稲田大に必死に食らいつき、往路を2位で終えました。

復路も6区で首位の早稲田大に2分差を開かれる厳しいスタートになりましたが、7区豊後8区深津がガンガン追いかけてなんと3分も差を詰め、相手の背中が見える位置で9区堺に繋ぎます。

 

そして、ここまでタフな場面を何度も経験し、太く逞しく戦ってきた堺にとって、逆転することはそう難しくないことでした。

 

すぐに前の早稲田大に追いつくと、しばらく並走した後に引き剥がし、最後は1分以上のリードを作ってアンカーの太田に渡しました。

 

その70分後、駒澤大は危なげなく3年ぶりの優勝を果たしたのです。

 

〇社会人時代

駒澤大卒業後は実業団の名門、富士通に進みました。入社2年目にはニューイヤー駅伝で4区2位、翌年は5区4位と主要区間で輝かしい実績を残し、2015年に現役を引退しました。

 

〇最後に

堺はかつての駒澤大の象徴のような選手でした。スピードは他校のエースに劣りながらも、追いかける展開でも逃げる展開でも走れるタフさがとても魅力的でした。

 

今季の駒澤大は10000mの上位10選手の平均タイムが28分25秒という圧倒的なスピードを備えているチームという評価でしたが、実は逆境にも負けない粘り強さが武器のチームでした。

 

箱根駅伝を振り返ってみても、1区の出遅れを決死の走りで取り戻した田澤や小林、創価大に離されても諦めずに追い続けた復路の選手たちと非常に逞しく戦いました。

その結果が総合優勝に繋がったわけです。

 

スピード化に対応しながらも、最後に勝負を決めたのは“強さ”です。

だからか、今回の箱根駅伝を見て、不思議と堺のことを思い出してしまったのです。

 

 

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