箱根路を駆けた名選手たち~中谷圭佑~

OB紹介

こんにちは。今回は月に1度のシリーズ「箱根路を駆けた名選手たち」です。今回紹介する選手は中谷圭佑(駒澤大卒)です。

駒澤大は代々、強力なエースがチームを牽引していく文化があります。宇賀地、窪田、村山、中村、工藤、片西など、振り返ってみれば魅力的なエースがたくさんいます。

彼らは安定した活躍をしていますが、それでもすべてが上手くいくわけではありません。中谷もその一人です。今回は優勝候補から零れ落ちそうになるチームを捨て身で支えた「駅伝の申し子」中谷の箱根駅伝を振り返ります。

〇高校時代

兵庫県の名門、西脇工業高校出身の中谷。2年連続で都道府県対抗駅伝1区区間賞を獲得するなど世代トップクラスの選手として活躍していた中谷。鳴り物入りで駒澤大に進学することになりました。

〇大学時代

■1年次

中谷が駒澤大に入学したとき、同期には西山と大塚、先輩には窪田、村山、中村と強力な選手が揃っており、間違いなく学生駅伝界最強クラスのチームでした。

そして、中谷はその中でもいきなりレギュラーを掴みます。

出雲駅伝では2区区間2位、全日本では5区区間賞の活躍で駒澤大の優勝に貢献。

箱根駅伝でも優勝こそ逃したものの、中谷自身は首位の東洋大を追いかけながら4区区間賞を獲得。スーパールーキーとして暴れ尽くした1年目でした。

■2年次

2年生になっても中谷の勢いはとどまることを知らず。出雲駅伝は台風で中止になってしまいましたが、全日本では2区で単独首位を固める好走で駒澤大の4連覇に貢献します。

この年の駒澤大は4年生に村山中村の最強ダブルエース、中谷、西山、大塚の2年生トリオ、スーパールーキーの工藤に山上りの馬場、山下りの西澤と役者が揃っており、箱根も圧倒的優勝候補でした。

中谷は3区を任されると、見事なスタートダッシュで首位を奪います。しかし、チームは5区で青山学院大の神野の衝撃的な走りに敗れます。

ここから大学駅伝界の主役が青山学院大へとシフトしていくことに。

■3年次

村山と中村の卒業により、エースとして駒澤大を牽引していくことになった中谷。出雲では1区区間賞の好走で優勝争いの波に乗せます。全日本でも1区4位、切り札として3区に起用された箱根でも区間2位とそれぞれ自分の仕事は果たしますが、チームはパンチ力に欠けて優勝争いに加われませんでした。

ちなみに、ここまでの3年間の中谷の駅伝成績は区間賞4回、区間2位3回、区間4位1回とまさに「駅伝の申し子」でした。

とはいえ、中谷が一人でチームを引っ張る構図となってしまっており、駒澤大は優勝候補からは一歩後退してしまいました。

■4年次

まとめのシーズンとなる4年次。中谷は10000mとハーフマラソンで現役学生日本人最高タイムを引っ提げて戦いますが、6月の日本選手権で足を負傷。出雲と全日本を欠場することとなってしまいます。

それでもなんとか間に合わせた箱根駅伝。3年ぶりの4区に出走します。

しかし、この道が中谷にとってつらく厳しいものに…。

5位でタスキを受けた時点で4秒前に東洋大の実力者、櫻岡がいたため「一緒に行くしかなかった」と入りの1kmから思い切り突っ込んだところで身体が固くなってしまいました。

その後は終始ペースが上がらず9位まで順位を落としてしまいました。途中、セルナルド(創価大)に背中を押されたときに食らいつく素振りを見せたのはせめてもの意地だったのでしょう。

しかし、エースのまさかの失速で動揺してもおかしくないところ、駒澤大は浮足立ちませんでした。5区大塚が区間賞の激走ですぐさま流れを立て直すと、シード争いに巻き込まれた復路も初出場の片西や堀合が果敢に戦って9位を確保します。

いつの間にか、駒澤大はエースがいなくても逞しく戦えるチームとなっていたということです。

〇社会人時代

駒澤大卒業後は日清食品グループへと進んだ中谷。しかし、脚の故障が癒える前にチームの活動縮小が決まり、すぐさまコモディイイダへと移籍します。

同社では東日本駅伝などで元気な姿を見せておりましたが、先日、動画にてチームを離れることを発表。正式な引退ではないとのことですが、ひとつ区切りとなりました。

〇最後に

今回伝えたかったことは、一人のエースの波乱万丈の物語です。強力な先輩エースの元でのびのび走れた1、2年次、チームを導くため奮闘した3年次、そして故障と戦って苦しんだ4年次。必ずしもうまくいくわけではありませんでしたが、それでも中谷はチームのために走り続けました。4年次の箱根は最たる例です。

無難に走り切るだけなら、周りを気にせず自分のペースで刻めばよかったのです。それを、オーバーペース覚悟で前方のチームを捉えにいくのはチームの勝利を本気で目指しているからこそのもの。その気持ちこそがエースである所以なのでしょう。駒澤大のエースはいつも熱いです。これは次期エースの田澤にも受け継がれていってほしい伝統です。

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