こんにちは。月に1度のシリーズ「箱根路を駆けた名選手たち」です。今回紹介する選手は梶谷 瑠哉(青山学院大卒)です。
梶谷は青山学院大の黄金時代に在籍していた選手です。2学年上に一色世代、1学年上に田村下田世代、同期には森田や林、小野田など周りには強力な選手ばかり。
その中で梶谷も高校時代には高い実績を持って入学し、下級生のうちからレギュラーを掴みましたが、実は順風満帆なレースばかりではありませんでした。
それでも、最後にはエースとしてチームを救うまでに。
悔しい思いもしながら、少しずつ強くなっていった梶谷の箱根駅伝を振り返ります。
〇高校時代
栃木県の白鴎大足利高校出身の梶谷。高校時代の5000mベストは13分57秒台と世代3位の好タイム。しかし、全国高校駅伝の出場経験は無く、都道府県対抗駅伝でも3年次は1区26位と全国大会で目立つ結果を残していたわけではなく、あくまで素材型としての評価が高い選手でした。
〇大学時代
■1年次
梶谷が入学したときの青山学院大はちょうど直前の箱根駅伝で初優勝したところ。4年生に神野や久保田、小椋らを擁するなど、まさに最強のチームでした。
梶谷も関東インカレで1500m4位に食い込むなどさっそく持ち味を発揮しますが、この分厚い選手層の中でいきなりメンバーに入ることは叶わず、青山学院大の箱根2連覇は控えとして見届けることになりました。
■2年次
梶谷の名が全国に轟いたのは2年次のこと。青山学院大は出雲、全日本と優勝を果たす中でどうもしっくり来ていなかったのが1区でした。
優勝を争う他校は服部弾馬(東洋大)、武田(早稲田大)、鬼塚(東海大)などエース級の選手を投入してきた中、その1区に梶谷が抜擢されることになったのです。
持ちタイムは良くとも、大学駅伝初登場の梶谷ではさすがに分が悪いのでは…?
と不安視されながら走り出した梶谷でしたが、終わってみれば区間賞と4秒差の4位と完璧なスタート。
新戦力の梶谷が他校のエースと互角に渡り合ったことで一気に流れが来ることに。
最後は2位に7分の大差をつけて優勝を果たした青山学院大ですが、間違いなく梶谷が立役者の一人となりました。
■3年次
2年次の活躍もあってレギュラー入りを果たした梶谷。ですが、この年は思うような走りができませんでした。
出雲では1区に起用されますが、暑さにやられたのか、最後はふらふらになりながら8位で中継。この出遅れが響いてチームは東海大に敗れてしまいます。
全日本こそ3区4位と無難に繋ぎますが、4区に起用された箱根ではトップの東洋大(吉川)から1分以上離される苦しい走り。
5区以降の選手たちが巻き返して優勝は果たしましたが、個人としてはやや不完全燃焼となりました。
しかし、この悔しさを晴らすかのように2か月後の学生ハーフで優勝。
ここから梶谷は逞しさを増していきます。
■4年次
4年次の梶谷、出雲こそ控えに回ったものの、全日本ではなんとアンカーを任されます。しかも、今度は7区を走ったエース森田の快走もあって、首位で襷を受けることに。
追いかけてくる湯澤(東海大)も実力者だったため、逃げ切れるか不安視されましたが、もう梶谷は立派に強くなっていました。
原監督からは「抑えていけ」と指示を受けていましたが、梶谷は「前半から突っ込んで相手の気持ちを折ろう」と前半から飛ばしていきます。
この作戦が奏功し、梶谷は悠々と逃げ切って優勝のゴールテープを切ります。
首位を守るのではなく、首位で攻める梶谷の勇気。
とても見事な走りでした。
出雲、全日本と優勝を果たした青山学院大、箱根5連覇に向けて順風満帆かと思われましたが、エースの森田が故障に見舞われるアクシデントが発生します。
本番には間に合ったものの、負担の大きい2区を回避して3区に回ることに。
もう代役の2区は梶谷しかいませんでした。
他校のエース達に揉まれに揉まれて区間10位。3位で受けた襷を8位まで落としましたが、出せる力は出したと思います。
苦戦覚悟のこの区間を梶谷が凌いだことによって、3区森田が首位浮上を果たす流れができました。
代役としてでも、エースとしての役割をしっかり果たす梶谷の姿がそこにはありました。
〇社会人時代
卒業後は実業団チームのSUBARUに進み、今ではキャプテンを務めています。
まだ実業団では目立った実績を残していませんが、梶谷は大器晩成のタイプなのでしょう。
先日の東日本実業団駅伝では7区2位の好走。少しずつ階段を駆け上がっています。
〇最後に
梶谷は強豪チームの主力選手でしたが、いつも上手くいっていたわけではありません。むしろ、悔しい思いを糧に強くなっていった印象です。
青山学院大の主将を務める飯田は今季、全日本大学駅伝のアンカー勝負で敗れました。その悔しい思い自体は消えることはないでしょう。
でも、次に活かせばいいのです。
そうして未来を切り開いてきた先輩が青山学院大にはいるのです。
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